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脇役1

長編
オリジナル
異世界召喚
コメディ
馬鹿っぽく
な小説です~

目指したのは『王道をいく親友を脇役の位置から見ている主人公』

脇役 第一話
 








夕方から夜へと変わるわずかな時間を私服姿の男子高校生二人が歩いていた。

「勇、相変わらずもてますね」

 話かけられた少年、日之下(ひのした) 勇(ゆう)が苦笑いを浮かべる、少しウェーブがある赤い髪に青い瞳、凛々しく整った顔立ちであり、フェンシングをやっている為体は引き締まっていた、その実力は若くして世界大会で優勝するほどである、そのうえ成績優秀であり、困った人は見過ごせない正義感、一度決めたことは最後まで遣り通す根性も持ち合わせている、まさに完璧である、しかしその男にも最大の欠点もあった。

「なに言っているんだ、皆ロシア人のハーフが珍しいだけだって」

 このように自分に向けられる好意、主に恋愛感情にはとことん鈍いのである。

「それよりも俺は晶の良さが周りに知られていないのが不思議だと思うが……」

「それはそうでしょう、存在感有りませんから」

 言いながらもさほど気にしていないのは八頭(やず) 晶(あきら)、勇の親友である、真ん中で左右に分けたの黒髪でめがねの奥にある糸目に見える瞳も黒い、基本インドアな生活をしているため体は細く色も白かった、そして先ほどの言葉のように非常に影が薄いのである。

「そうか? いまどき高校生で家事全般こなせて周りのことも気を配れる、そんな奴最近いないぞ!」

「一人暮らしをしていたらごく普通ですが……」

 やたら熱弁する勇を、何だか危なげに見えた晶は若干引き気味である。

「なんで離れていくんだよ」

 笑いながら勇が肩を組んだ瞬間、まだ日が残っている山の頂から黒い光が包み込みすぐさま消える、それらは一瞬の出来事であったが、そこには人が居た形跡すら無くなっていた。

 晶はは呆然としていた、突然辺りが暗闇になったかと思うと次には真っ白くなったのだ、霧が晴れていくとそこは一変していており、まったく見覚えの無い所に居た。勇も同じなのだろう同じ表情をしていた。
 見渡す晶にはまったく知らない場所であった、天井は高くドーム状になっており、四角い石で積み上げられた壁にはステンドグラスがはめ込まれている、目の前には祭壇らしきものがあった、まさに教会といった風情だ。

「あ、あの……」

 いまだに現状が理解できていない晶に声がかかる、振り向くとそこには美少女がいた、白地に所々青いラインが入った全体にゆったりとしたローブの様なものを羽織っておりその姿は聖職者を思わせる、腰まで届きそうな金髪は緩やかに波うち、瞳は黄色、目尻が下がっていて優しげな雰囲気を感じさせた

「勇者様! どうかお助けください!」

 どうやら声をかけたのは勇であった、両手を祈るように握り詰め寄り懇願しはじめた。

「ちょ、ちょっと待てよ、勇者!? 行き成りなんだよ!?」

 困惑する勇、わけも分からない状況で突然勇者と言われるのだ、当然である。

「あ、申し訳ございません! わたしの名前はマリア・セイ・フォトンと言います、此処はアズガルド大陸にある王都トキです、今現在魔王が現れ襲われています。魔王を倒せるのは勇者様のみ、それ故に勇者様を御呼びいたしました」

 マリアは勇に頭を下げ現状を説明する。

「なるほど、つまりゲームとかファンタジー小説とか漫画みたいな、王道の勇者召喚物、といった感じですね?」

 晶が顎に手を当て予想を立てた。

「え!? あ、あの、この人は?」

 マリアが驚き困惑しながら晶を見る、それもそのはず普段から影の薄い晶、直ぐそばには存在感抜群の勇が居るのである、言葉を発しなければずっと気づかれないままだっただろう。

「八頭晶、俺の親友だけど、いま召喚したって……」

「いえ、勇者様は一人しか召喚されませんが……」

 勇とマリアがお互いに顔を見合わせ、首をかしげる。

「本当は勇のみ召喚されるはずが偶然肩を組んだ瞬間に召喚、自分が巻き込まれる形となったわけですね」

 閃いた晶が手をポンと叩き予想を口にする。

「いやいやまてまてまて、俺が勇者として召喚されたとは決まって無いだろ? 晶かも知れないじゃないか!」

「ほほう! 容姿的にも能力的にも、どう考えても勇しかありえません! そして何より!」

 晶は勇の言葉を否定しながら意味ありげに言葉をため。

「貴方が美少女の願いを聞き入れないわけが無い!」

 神の啓示のごとく勇を指差す。

「ぐ! それは、そうだが……」

「ふふん、そうでしょう」

 言い当てられ言葉に窮する勇をみて得意げに胸を張る晶であった。


「分かったよ、勇者とやらをやるよ、何処まで出来るかわからないけどな」 

 勇はふうとため息一つついて決心したようである。勇者自体に余り興味が無さそうだったがが、晶に言われたように美少女の願いを無下には出来なかったのだろう。

「本当ですか! ありがとうございます」

 答えを聞いたマリアはよほど嬉しいのか勇の手を握り締めた。

「ああ、俺の名前は日之下勇だ、勇でいい、これから宜しく」

 勇は笑顔を浮かべる。

「ところで、手を開放してくれるか?」

 マリアはハタと気がつき、離れようと一旦下がった、しかし下がった足元には着ているローブの裾があり思い切り踏みつけていた。なんというドジッ子。

「わ! うわわわわ!」

 腕をクルクル回して立て直そうとするが、当然無理な話であり後ろへ倒れていく。

「おい!」

 しかしそれを黙って見過ごせない勇は素早く手を伸ばし引き寄せていた。

「大丈夫か?」 

「はい、大丈夫で……」

 勇に問われ少女は答えるが途中で硬直している。勇の顔を近くで直視し優しく抱きしめられた状態だからなのだろう。少女の顔は瞬時に真っ赤に染まり、アウアウとよく分からない言葉を発している。しかしそれを見ても勇は風邪気味のなのかと疑問に思うだけであった。

(流石、流石です勇! 異世界に来ても変わらずもてるようです、良いですねもっとやってください!)

 そんな様子を晶は気づかれない様にニヤニヤと見ている、実は勇に惚れた女性達のゴタゴタを楽しんでいるのである。そしてそのゴタゴタを女性達にアドバイスという形で裏から色々と手を出し、引っ掻き回すのである、勿論殴り合いなど酷くならないように調整をしながらではあるが。

「しかしお前この状況でよく冷静に居られるな」

 勇がマリアを離し腰に手を当て呆れていた。

「異世界召喚、ずっと夢見ていたのですよ。現実にはありえないと思っていましたけどね、しかし、今まさにその出来事が起こっているのです。こんなこともあろうかと、というのは嘘ですが想像はよくしていたので結構冷静でいられました」

 晶は理由を述べながら納得するように頷くのであった。

「ところで……この後は王様に会う、というのが大半ですが?」

 晶はマリアの肩を叩き正気を取り戻させる。

「ハッ! そうでした! 王が謁見の間でお待ちです、行きましょう!」

 思わぬ勇との接近に意識が飛び掛っていたようである。

 
 祭壇があった場所はどうやら城の中のようで、石造りの長い廊下を晶達は歩いていた、王に報告するために謁見の間へ移動中である。

(ん? アレは何でしょう?)

 途中T字路で視界の隅に光るものを捉えた晶は気になり其方へ向かう。そこにあったのは簡素な装飾が施された腕輪であった、なんとなく付けてみる。

「綺麗な腕輪です……ね……」

 腕輪を付けた途端視界に入ってきたモノを見て思わず言葉に詰まった、そこには空中を漂う少女がいたのである。少女と言っても拳大の大きさの三頭身にデフォルメされた可愛いもので、肌は白いが髪、服、瞳が淡い緑であり真っ直ぐの長い髪を揺らし白いワンピースの裾を靡かせながら風に流されるように漂っていた。

「自分はロリコンではありませんよ」 

 晶が一瞬混乱してわけの分からないことを口走ってしまう、見間違えたかと目を瞑り再度開いた。相変わらず見える、ならばと腕輪を外す、それでも見えていた。視界の隅に何かが入り、そちらに視線を向ける。

 今度は同じ姿の黒色の少女が影の中蹲っていた、周囲を見渡すと茶色の少女が地面を闊歩し、白い少女は光が射している場所を緩やかに飛行している、青い少女は緑の少女と共に漂っていたり黒い少女の隣で座っていたり、赤い少女は日が射している場所で陽気に踊っていた。

 ジッと黒い少女を見つめていると視線に気がついたのだろう、晶に視線を合わせの足元にトコトコと寄ってきた。愛らしい姿に晶はしゃがみ込み頭を撫でる、すると黒い少女は目を細めおとなしく撫でられていた。

「晶、どうした?」

 晶に勇の声が掛かる。

「これを拾いましてね」

「グロウアの腕輪ですね、申し訳ないですけ、時間が迫っていますので後で説明しますね」

 腕輪を見たマリアが手を合わせ謝りながら答えた。

「いえ、王様がお待ちならそちらを優先するのが当然ですからね、かまいませんよ」

 微笑を浮かべた晶は視線を足元に向ける、そこには先ほどの黒い少女の姿は消えていた。


 細かい装飾が施された冠をかぶり真紅のマントを肩から掛け、口元に髭を生やし、見下ろす眼は強い意志を感じさせる、一目見ただけでも王と分かる威厳がそこにはあった。

「神官マリアよ、其の者が勇者か?」

「はい王様、名を日之下勇と申します」

 王が勇を差しながら問うとマリアが片膝を付きながら答える。

「では勇よ、我々の為に魔王を倒してくれるか?」

「はい! 必ずや倒して見せましょう」

 勇の答えに王は満足げにうなずくのであった。

「勇者よ、この者達を連れて行け」

 左右から現れたのは二人の女性、腰まで届く赤い髪を首元で縛っており、凛とした顔立ちでつりあがった真紅の眼は鋭い眼光を放っている、高い身長の体はスラリとして猫を思わせ、腰にバスタード・ソードを挿し、鎧を着た騎士姿はとても凛々しい。

 もう一人は鍔の広いとんがり帽子に黒いマント、袖口が大きく開いたローブから所々見える神秘的な白い肌の全身を覆っている、いかにも魔術師といった姿。緑のショートカットが僅かに見える、深緑の瞳の目元に魔術的な刺青は知的な雰囲気を感じさせ、無表情だがそれでも見ほれるほどの美貌であった。

「騎士ユナ・キ・ロードと魔術師メイ・フォー・マグダリアだ、二人とも優秀だ、足手まといにはならぬ、協力せよ。そして神殿にて宝玉を受け取るがよい、詳しいことはマリアに聞け、では頼んだぞ」

 ユナとメイを連れ謁見の間を晶達は退出する。

(王様、自分の存在に気づいていたのでしょうか? 多分気づいて無いでしょうね……)

 視線すら向けられなかった晶の疑問はよそに王との謁見は終了するのであった。



第二話
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ジャンル : 小説・文学

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