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脇役二

脇役 第二話

第一話



第一話





 そこはとても神秘的な場所であった、石で作られた円柱が立ち並び、同じ素材の天井はとても高い、一番奥には半円状に浅く水が張られている、波一つ浮かばず静寂を保ち神殿内を冷やしていた、半円の中心に真っ白な玉を掴むような複雑な彫刻が立てられている、ステンドグラスがはめ込まれた天窓からの光が差し込み幻想的であった。

「改めて名乗ろう、騎士のユナ・キ・ロードだ、ユナと呼んでくれて構わない」

「魔術師メイ・フォー・マグダリア……メイでいい……」

 ユナが勇に握手を交わしメイは頭を下げている。

「日之下勇だ、これからよろしくな」

 輝くような笑顔を向けられた二人は思わず見ほれているようであった、晶はこの人たちも勇のと虜に、三つ巴か、とニヤニヤとその様子を眺めていた。

「次は自分ですね」

 晶は顔を引き締め、頭を垂れる、しかしユナとメイは訝しげに晶を見たあと警戒心を表した。

「貴様! 何処から侵入した!」

 ユナがすぐさま刃を晶の首筋に、メイは持っている杖の先端を向ける。

「ええ!? ちょ! ちょっと待ってください!」

 晶は降参とばかりに両手を上げた、思わぬ事態に冷や汗が出た。

「ユナ! まて! ストップ! メイも杖おろしくれ」

 勇がすぐさま止めに入る、ユナを後ろから羽交い絞めにして押さえ、メイには視線を向ける。二人は渋々降ろすがいまだ警戒は緩めていなかった。

「突然現れた…… 暗殺者か新たな人型の魔物かもしれない……」

「……いままで影薄いとか色々言われましたけど、そこまで言われたのは初めてですよ……」

 メイの言葉にいささかショックを受け、晶はガックリと項垂れるのだった。

「オホン! とにかく気を取り直して、自分は八頭晶です、勇の親友やっています」

「親友?」

 ユナは勇に首を向けて真意を問いている、勇は首を縦に振り肯定した。

「そうか、知らないとはいえ勇殿の親友に刃を向けてしまうとは、すまなかった」

「ごめんなさい……」

「いえいえ、自分も気づかれないことには慣れていますから」

 謝る二人に晶は気にしないと首を振った。

「しかしいつから居たのだ?」

 ユナは首をかしげる。

「最初から居ましたよ」

「最初……から……だと!」

 晶の答えを聞いたユナは戦く。

「神殿に着いた時から……?」

「はい」

「まさか神殿に来る途中も……居た……?」

「ええ、勿論です」

「もしかして……謁見の間の時も……?」

「はい、居ましたよ」

 メイの問いに晶はにこやかに答える。

「その時から居たのに気づかぬとは! 騎士……失格だ!」

 両手両膝をついてユナは物凄くショックを受けているようであった、メイも分かり難いが結構落ち込んでいた。

「ユナ? どうしたの?」

 別室から書物を取りに戻ってきたマリアがユナの姿を見て首をかしげている。

「晶殿にまったく気づいていなかった事に……ちょっとな……」

「あ~……」

 マリアは納得したのか頷いていた、二人友人という間柄なのだろう敬語はなく砕けた話し方であった、雰囲気からメイも同じだろう。

「さて、勇者様、宝玉はあちらです、宝玉は勇者様のみ触れます、周りの水も特殊な魔法が掛けられており、勇者様でしか渡れませんので私達では近づくことすら出来ません、勇者様お願いします」

 マリアが指差したのは水面に建った掴むような形の彫刻にある白い玉であった。

「あれを取りに行くのか……というかもしかしたら晶、お前が勇者かもしれないぞ? 取りに行ったらどうだ?」

 勇が晶を促す。実際勇が勇者とまだ決まったわけではない、頼まれたからとはいえ自分から勇者をやると言っただけであるし、晶も王道の展開から予測しただけにすぎない。

「何度も言いますがそれはあり得ませんよ、なんだったら聞いてみましょう、お三方、自分と勇どちらが勇者に相応しいと思いますか?」

 ビシ! と勇を指差す。

「ほら見なさい、自分の立ち位置は弁えているつもりです」

「いやいや、それは皆の意見であって選ばれたわけじゃないぞ!」

「貴方ほどの男が選ばれないとしたら誰も勇者にはなれませんよ!」

「勝手に決めるな!」

 言葉を荒げだんだんと白熱していく。

「分かりました! でしたら男らしくコイツでどちらが行くか決めましょう、負けた方が行くと言う事で!」

 晶は拳を握り突き出し。

「いいぜ! 後悔するなよ!」

 答えるように勇もニヤリと笑うと構える。

「ちょっとまってください! 二人ともやめ――」

 マリアが止めに入るが、残念なことにすでに手遅れであった、二人が構え、緊迫した空気が周りを包み込む。


「ジャン!」


 晶が声を張り上げ。


「ケン!」


 勇が裂帛の気合とともに叫ぶ。


「「ポン!」」


 余りの展開についていけ何のだろう呆然となるマリア達三人であった。

「ば、馬鹿な! 自分の豪熱機関銃拳(グー)が負けるとは!」

「フフン! 俺の爆熱神指(パー)は不敗だ!」

 膝を付きわなわなと震える晶を尻目に勇は開いた手を掲げる。

「紛らわしい!」

 スパァァァァァァン!

 晶はユナがいつの間にか手にしたハリセンの衝撃を受け、同じく勇も後頭部を叩かれていた。

 ジャンケンに負けた晶が挑むことになった。  

「水にも魔法がかかっている、ということですが……どのような物ですか?」

 水面近くまで行きマリアに尋ねる、万が一呪われるだの感電死だのと一撃で天に召される事態は避けたいものである。

「それは……」

「……それは?」

 マリアが口ごもる、それほどまでにやばい魔法がかかっているのかと晶は猛烈に不安になる。沈黙が重い。

「……神聖で誰も触ろうとしませんから実は分からなかったりして」

「わからないのですか!」

 テヘッと舌を出すマリアに手の甲でパシンと一発。

「ふ~、自分が第一号ですか……」

 ため息を吐きながら水面を見る晶、浅いが何か得体の知れない魔法生物がいるのかと目を見開いて確認するが、とても生物がいそうにない、ゴクリとつばを飲み込み、そっと手を差し入れる、触れたが何がおきるわけでもなく、ほっと一安心。

(何もおきない? まさか……そんな展開が!?)

 どんな男でも一度は夢見る勇者と言う立場、思わず期待をした晶は一歩踏み出し――


ドブンと沈んでいった。


「げふぉ! げふぉ!」

 背中を擦られながら晶は全身ずぶ濡れで咳き込む、溺れかけたがまだ一歩目だったので直ぐに縁につかまることが出来き、その後皆に助け出された。

「なんでこの深さで全身沈むんだよ」

 勇が水面に近づき水を確認する、見た目には体を倒しても全身入るには無理なぐらい浅いかったのだ、不思議極まりないだろう。

「次は俺の番か……」

 晶の様子を見たのか、慎重に縁に立ちそっと足を入れていく、水面に波紋が広がるがあっさりと底に足がついている、そのまますんなりと水面を歩き彫刻の元にたどり着いていた。

「晶の言ったことがあたったな」

 感慨深いのだろう、うなずき目を瞑っている、決心したのかもう一度開いた瞳には決意が込められていた、そして躊躇することなく宝玉を抜き取った。

「やはり勇者は勇でしたね」

 その様子を見ていた晶は残念な気持ちを極僅かに感じながらポツリと呟いた。


「これってどうやって使うんだ?」

 勇の手の中にはビー球サイズの白い宝玉がある、それを指に挟んで日にかざしてみたり、覗き込んだりしているがまったく変化は無かった。

「念じれば装着できる、と書物には書いてありますが」

 マリアは本を開いていた、白い表紙には一行ほど金の文字が書かれている。

「こういうのは伝承とか口頭で伝わっていたりするのでは?」

「なんでもこの書物は初代の勇者様からご使用になられていたものらしく、宝玉の使い方などが書かれています」

 マリアの答えに晶は納得する、全員の視線が本へと向けられる。

「初代勇者から使用? どれぐらい昔か分からないですけどそれ程本が古くは無いですね?」

 晶が言うように茶色く変色していない、大事に保管してあったとしても多少は痛むものではあるが、その様子が殆ど無いのである。

「初代勇者様はおよそ二千年前の方です、勇様で五代目ですね、これは古くなる度に新しく清書しています、本は何もされていない普通の書物でしたから」

「でも結構アバウト……」

「だな」

 メイの意見に勇は同意していた、念じろといわれてもどのように念じればいいのか分からないのだろう、しかし突然よろいに覆われた。
「なにをしたんです?」

 平然と聞いているが晶は内心驚いていた。

「装着ということからはとりあえず、特撮を想像して変身、と念じてみたんだ」

 呆然と勇が体を見回しているときに同じく晶も観察していた。

 真っ白な顔も覆う全身鎧とレイピアを少し長くし、両刃を備えたエペを装備した勇の姿があった。竜の姿をモチーフにしたのだろう、所々棘のようなものが有り、兜は竜の顔を模している、口の中に勇の顔があり目の以外を覆う簡素なマスクになっている。

「へえ、こうなるんだな」

 勇は感心しながら改めて隅々まで自分の体を見回している。

「何だか全身覆って動きにくそうですが、大丈夫ですか?」

「いや、まったく問題ないな」

 晶の疑問に答えるように勇は肩を廻し、足の関節も廻してストレッチをしている、そして両手を真上に上げ左右に開きながらおろし深呼吸をする。二回繰り返したのち、両腕を交差、膝を軽く曲げ伸ばしながら両腕開――

「ラジオ体操ですか!」

 晶はおもわず渾身の力を込めて勇の頭を叩く、しかし叩いたのは全身鎧の勇である、痛さに蹲る晶なのであった。

「あ~とすまん、ところでマリア、解除はどうすればいい?」

 勇は痛がり様に悪くは無い声が申しわけそうになっていた。

「はい、え~と同じく念じれば戻るそうです」

 マリアは本をペラペラとめくり探し出した。

「又アバウトな、初代勇者は本能で使用していたのか?」

「あはは……」

 勇の意見にマリア自身も少し同じことを思ったのか笑って誤魔化していた。

「じゃあ解除っと」

 勇から離れ一瞬で宝玉へと戻っていった。

「う~む」

 勇が顎に手をあて悩み始めた。

「勇、どうしました?」

 顔を覗き込とその瞳はとても真剣な目つきである。晶はその様子に何か問題があるのかと気を引き締める。そして勇は顔を上げる。
そしておもむろに宝玉を握り締め、顔の横に両手の握り拳を持っていき、力を込め強く握る。

 右手を左上に、左手を左腰に素早く持っていく、そのまま右手を右上に弧を描くように移動し、素早く振るように左手を左上に伸ばし右腕を曲げながら右手を左胸に持っていき念じる。

「変身!」

 叫ぶ勇。

「どこのブラックの変身動作ですか! さっき物凄く真剣な瞳はなんだったのですかー!」

 晶はパグンとび蹴り一閃ブチかました。

「鎧着たときの突っ込み酷過ぎるぞ!」

「なに、無傷で済んでいるから気にしない」

 勇が後頭部をおさえながら詰め寄るが晶は肩に手を置き、清々しい笑顔で親指を立てる。

「カッコいい……」

 二人のやり取りの合間を縫ってメイの声が教会に響きわたった。

「変身の動作……カッコいい……もう一回……!」

「え~と……今のは思いつきでやっただけだから、改めてやると恥ずかしいのだが……」

 ジッとメイは勇に視線を合わせている。

「……」

「……」

「……」

「……」

「わ、わかった」

 勇は根負けしてのか了承すした、メイは余程嬉しいのであろう、花が開く様に満面の笑みを浮かべている、勇は一度解除する、その顔は少し赤い、チラリとメイに視線を送ったあとため息一つ、恥ずかしさを吹き飛ばすためか勢よく構えた。

第三話
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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