スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

脇役三

脇役 第三話


第二話








「そういえばこの腕輪、え~とダラダラの腕輪? これはなんです?」

「クス、グロウアの腕輪です」

 晶は勇達をほったらかしにしてマリアに尋ねた。

「それは術者見習いが着けるものですね、最初の段階、魔力を認識するための物です」

「魔力を認識する?」

「はい、空気中や人などから発せられる魔力です、わたしやメイの周りに何か見えますか? ユナは少し違って見えると思います」

 マリアに言われ腕輪を付けて目を凝らし、よく見てみるが晶には何も見えない、ユナにも目を移すがやはり何も見えなかった。相変わらず小さな少女達が漂っていたり、座っていたり、散歩していたりしているだけである。

「何も見えませんね」

 マリア達からは何も見えないので正直に言う。

「そうなのですか? だとしたら、その、少し言いづらいですが」

「魔術の才能がまったく無い」

「ぐふ!」

 抉り込むように容赦なく言うユナの言葉に晶は胸を押さえた。

「ええ、大なり小なり少しでもあれば神官や魔術師などの周囲には霧が、騎士や戦士などは陽炎が薄っすらと見えます」

「たぶん自分達のいた世界には魔術は有りませんでしたからね、そのせいでしょう」

 晶は自分で予想を立てる、それが一番の納得できる理由でもあった。

(ではこの少女達はいったい? この腕輪を付けてから見えるようになりましたから魔力に関係してそうですけど……それにどうやら皆さんには見えていないようです……)

 マリアやユナの前を緑や白の少女が目の前を通るがそれに視線が一瞬も行かない、つまり見えていないのだ。

(皆が見えていない物を見えていると言い、しかもそれが少女だと言うと……周りから自分は少女の幻覚をみているロリコン異常者? さ……最悪です)

 自分の想像に若干青くなる晶、デフォルメ少女のことは周りに言えなかった。

「晶……どうしたの……?」

 青くなった晶にメイが声をかけに来ていた。

「いえなんでもないです! ところで勇、疲れるほど繰り返したのですか?」 

 メイの後ろに肩で息をする勇が目に入った晶はちょうどいいと、追求を避けるため話を変える。

「おうよ! 何度も頼むから一号、二号はもとよりV三からアマゾン、昭和ライダーのオンパレードやってやったぜ!」

 晶に向かって親指を立てる勇の姿はやり遂げた感がすごかった。

「素晴らしかった……」

 メイの表情の変化は無いが少し赤い、言葉の雰囲気から若干興奮気味のようであった。


「この宝玉一つで魔王と戦えるのか? 俺の戦闘技術とか経験が必要なのは分かっているが……」

 自身の鎧姿を見て勇は疑問に思ったのだろう、勇者が使用したと伝えられる物ゆえに、性能に問題ない事が晶には突っ込んでいたから大まかに分かってはいる、しかし外から見ても身体能力が上がったと言った感じは無く、立派な鎧と細剣としか感じないのである。

「それだけではまだ駄目ですね、今は封印状態なので世界の何処かにある封印の鍵で解かないといけません」

「世界の何処か、ですか? なにかヒント等ありませんか?」

 晶が渋い顔つきになる、何もなしで探すとなると世界中くまなく探さなければいけない、世界は広い、あてずっぽうに探すと途轍もなく手間がかかる。

「え~と……これかもしれません、先の錠、灼熱と砂の世界に眠りし石の蔵、影に篭りし空間にて眠るだろう、後の封、凍てつく吐息に晒されし山の恵み、深く沈み、青き世にて目覚めを待つ」

 全員に聴こえるようにマリアは朗読する。

「先の錠と後の封、封印は二つ、そして解く順番も決まっているみたいだな?」

「でしょうね」

 ユナの言葉に同意見の晶は頷く。

「そして先に行く場所は灼熱と砂から砂漠の可能性が高そうだな、凍てつく吐息は吹雪か? 北の寒い地域位しかわからないな……」

 漠然としか位置が分からないためか勇は少し不安げな声を上げる。

「砂漠はオキ砂漠がある……寒い地域は範囲が広すぎる……」

「じゃあ。始めはオキ砂漠か、他の細かいことは其処の近くにある村や街の伝説とか、言い伝えとか聞いて推測するしかないな、勇者に関係することだから何かあるだろう」

 勇の意見に全員頷いていた。

「その前に勇が何処まで通用するか試してはどうです?」

 晶が手を小さく上げ意見を述べる。

「そうだな、勇殿一つ手合わせ願おう!」

 やはり騎士というだけあって戦闘に興味があるのだろう、嬉しそうにユナが願い出た。

「おう! 良いぜ!」

 勇も楽しみなのか景気良く答えていた。


 大きな広場には所々木で出来た案山子のような人形が立っている、晶が周囲の壁に目を配ると多種多様な武器が置かれているが全て木材で作られていた、案内された場所は修練場と呼ばれていた、流石に神殿で行う訳にもいかないので此処へ移動したのである。

「実はユナ、お前に興味があったんだ」

 勇もフェンシグをやっているためか、強いも者との勝負には興味があるのだろう、しかし言った台詞はなんとも告白じみたものであった。

「な! なにをいきなり!」

 とたんユナは顔を赤く染め上げ仰け反っていた。

「なにをいきなりって、なにが?」

「…………」

 勇は自分が言った言葉がどのように聞こえたか分かっていないのが晶にはわかった、そのことを同じく理解したらしいユナは顔を赤らめたまま目を逸らしつつ押し黙る。首をかしげる勇のそばにマリアが近づき軽く袖を引っ張っていた。
「わたしは神官ですけど戦えますよ」

 同じ言葉を言って欲しいのか、マリアは期待の眼差しを向けている。

「ほほう、そいつは楽しみだな」

「あの、そうではなく……きょ、興味が……その……」

 勇から聞きたい台詞ではなかったのでマリアは肩を落としていた、勇は首をかしげるだけでやっぱり分かっていないのであろう。

「マリアさん」

「ひゃ!」

 晶が声をかけるとマリアが驚きの声を上げる、落ち込んでいる所に突然声がかかった感じだったのだろう。

「いつ来たのですか? 驚かさないでください」

「話しかける人に大概言われます……」

 晶としては普通に話しかけただけである。

「それよりもマリアさんは神官でしたね? だとしたら回復といった魔術関係が使えるのですか?」

 晶は声を潜め、そしてそのまま勇に気づかれないようにマリアと離れていった、勇に気づかれて自分とマリアがお互いに気があると誤解をさせないためである。

「はい、使えますが?」

 マリアも同じく声を潜めていた。二人してしゃがみ込みヒソヒソと話す。

「ならば勇が怪我したときが好感度を上げるチャンスです」

 ジッと視線をおくるマリアその瞳はとても真剣である。

「実力差がどれ位有るか分かりませんが、多分二人が手合わせすると白熱して無傷ではいられないはず、そこで晶の傷を優しく癒すのです!」

「ただ癒すだけでいいのですか?」

「はい、変に意識すると違和感がでます、癒した後ニコリと微笑を浮かべるだけでいいです、自信をもってください、いけます!」

 マリアの肩を軽く叩いて気合をいれさせる、叩かれたマリアは一つ頷くと勇達二人の近くで待機していった。

「では始めるか」

 ユナは壁に掛けられた片刃の木刀を持ち、同じくかけられていた先端が丸められている金属でできた練習用レイピアを勇へと放り投げる。

「おう!」

 ユナが正眼に構えると勇も受け取りフェンシングの独特の形で構えている。

 ゆっくりと二人の間合いが詰められていく。

「せい!」

 気合と共に勇が仕掛けた、狙うは鳩尾だろう、一直線に突き出していた。

「は!」

 しかしユナが左へ受け流し、そのまま滑らせるように首へなぎ払った。

 勇はバックステップで余裕で回避した。大きく下がり間合いが開く。

「やっぱり、これ位じゃ駄目だな」

「ふふ、当然だな」

 まだまだ練習程度なのだろうお互いの楽しげに笑い、にらみ合っていた。

 緊張した空気が流れ始め、空気が重くなっていくのを晶も感じていた。

 先ほどよりも遅くじっくりと間合いを狭めて互いに機会を伺(うかが)っているのだろう。

 ユナが一気に詰め寄った、振るわれる刃は様々に変化している。

「せい! やあ!」 

 フェイントを仕掛け、上段、中段、下段と素早く振るわれる。

「なんの!」

 勇も負けずそれらを素早く回避、受け流す当たり流石である、僅かな隙を見つけて鳩尾や喉など急所を狙っているようだが悉(ことごと)く弾かれていた。 

「はあああああ!」

「うおおおおおお!」

 裂帛の気合と共に速度があがった、蝶のように舞い蜂のように刺す、互いの攻防が目まぐるしく変化していく様は正に演舞であった。

「いくぞ!」

 焦れたのかユナが一気に攻め始め、素早く繰り出し勇の反撃を封じる。

「く!」

 全て防ぎきれなくなり勇の体に所々掠り始めた。好機とばかりに回転数をさらに上げるユナ。

 全て避けるのは無理なのだろうそれでも急所は回避している。

 勇の体力に限界がきたのか、踏ん張りが利かなくなりバランスを崩した。

「もらった!」

「まだだ!」

 ユナは一気に振り下ろす、しかし強引に体勢を崩したまま勇が突き出したレイピアがぶつかる、激しい衝突音と共に二人は弾かれるように離れた。

「はあ、はあ、流石勇殿」

「ぜえ、そ、そっちこそ」

 息を切らせ二人はニヤリと笑う。

「ふ~、これで最後だ」

 ユナは正眼に構え直しながら呼吸を整え始めるた、それと共に気迫が増している。勇も気合を入れ直し迎え撃つ態勢をとっていた。

「はあ!」

 大きく一歩踏み出し大上段から打ち下ろす、同時に切っ先から青白い衝撃波が地面を抉りながら勇に襲い掛かる。勇はも流石に驚いていたが一瞬で気を持ち直し、レイピアを横に構え衝撃に備えた、衝突し空気が爆ぜるとともに勇が吹き飛んだ。

「うぐ、な、なんだ今の?」

 身体に影響があったのか、勇はなんとかといった感じで上体を起こす。

「熟練の戦士なら、誰でも使える、まだやるか?」

リスクがあるのだろう、切っ先を向けるユナは息が荒い。

「無理! 俺の負けだ!」

 負けを宣言する勇、力を抜きぐったりと仰向けに倒れた。

「大丈夫ですか?」

 マリアが勇に寄り添い優しく触れる。

「光よ、浄化の力をもって癒したまえ」――ヒーリング――

 そっと触れる手先から白く淡い光が見て取れ、傷が治っていった、それと共に勇の息も整っていく。

「へぇ、傷だけじゃなく体力も回復するのか、マリア、ありがとう」

「気にしないでください」

 勇は自身のの体を見回して礼を述べる、傷が治ったのを確認したマリアは安心したような柔らかい笑顔を浮かべた、それを直視したのだろう思わず見ほれてしまう勇なのであった。

 その様子を晶は凝視していた、マリアと勇を見て楽しんでいたいが、別に気になるものが見えたのだ、魔術を行使したとき不思議な光景を目にしたからである。

(白い少女が魔術を手伝った? いやむしろ少女達が行使するほう?)

 先ほどマリアの手先が光っていたとき白い少女が三人集まり傷へ手を翳し、手から発せられる光を当てていた、光が当たる場所の傷は治療されていく、チョコチョコと勇の周りを走り、傷を次々に治していったのだ、ユナにヒーリングを施しているのを見るがが同じである、晶から見るとマリアが治すというよりも、少女達が治しているようであった。
「そういえばメイさんは魔術師なのですよね?」

 晶の問いかけにメイは頷きで答える。

「すいませんが、魔術を見せてくれませんか? 実際に見ておけば、使われても動揺しなくなると思うのです」

「そうだな、一度見ておきたいな」

 勇が晶の意見に同意する、しかし晶の目的は言葉通りではなかった、色の少女達が魔術と関係しているか確認したいためである。

「分かった……」

 メイは了承すると案山子の人形に正対すると持っている杖を軽く掲げた。

「火よ、燃え盛る炎をもって焼き尽くせ」――ファイヤーボール――

 杖の先端に人の頭ぐらいの火球が現れ打ち出される、高速で飛び、人形に当たると爆発を起こした。

「すげー!」

 勇が興奮した様子で叫ぶ、瞳が好奇心で輝いているのが良く分かる。褒められたメイは自慢げにちょっと胸を張っていた。

(やはり少女達は魔術に関係してそうですね)

 晶は神妙な顔つきであった、詠唱――火よ、燃え盛る~の部分――すると二人の赤い少女がメイに近づき、頷くと杖の先端へ移動、唱えると同時に小さな紅葉の手を翳した、火球が現れ、そして少女二人は楽しそうに転がし始めたのである、火球が爆発した時も吹き飛んでいたがこれまた楽しんでいた。攻撃の魔術を小さな少女が楽しそうに行う、なんともシュールな光景である。その後メイの近くに行きジッと見ていたが何処かへ行くのであった。

 二人から少し離れてしゃがみ込む晶、近くにいた青い少女に視線を向け小さくおいでと呼ぶ、すると青い少女は晶に近づき見上げる。

(呼ぶと近づきますね……青いから水関係? 水が出せるのでしょうか?)

 突然青い少女が両手をかざすと手からシャワーの様に水が出された。

(声に出した? いやそんな覚えは……思考を読んだのでしょうか?)

 青い少女が晶をじっと見詰める。

(なんでしょう? そういえば黒い少女の頭を撫でると嬉しそうでしたね)

 晶は思い出し青い少女にそっと手を伸ばす、怖がる様子もなかったのでそのまま頭を撫でた、青い少女は目を閉じ気持ちよさそうである。

「ありがとうございます」

 晶が小声で礼を言い、手を離すと少女はお辞儀をしてどこかへと歩いていく。

(ふむ、赤い子は火、青い子は水、緑の子は風、茶色の子は土、黒い子が闇で白い子が光ということですか、使ってもらっても自分は疲れないのはいいですね)

 次々に各種の色の子を呼んで手から出してもらい、晶は分かる範囲で調べた、戦闘に使えるか思ったがと両手から形も決めず、ただ出すだけなのでまったく使える様子は無かったのである。

(二人以上は無理ですね、さて自分のことはこれぐらいですかね?)

 勇に視線を向けると杖をもって唸っている勇姿があった、魔法の使用を試してみたが全くできないようであった。
スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
カテゴリ
最新記事
プロフィール

柑橘ルイ

Author:柑橘ルイ
FC2ブログへようこそ!

最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。